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主に観た映画の感想とか。

落下の解剖学

「落下の解剖学」観た。近年の話題作。

ネタバレ注意。

夫が死に、妻が容疑者として疑われるのだけど、殺したのか、自殺だったのか真相は最後までわからないまま、言うなれば映画的オチがないままに終わる。

裁判では無罪だから、それはまあ、無罪扱いなのだけど、本当のところは語られはしないということ。

主人公の少年は目が悪く、いくつかの証拠録音品もノイズ(大音量の音楽)にまみれていて、霧の中を進んでいるようで、

超越的な審級がない。俯瞰する神の、上からの視点が。本当のところが語られはしないというのは、そういうことで、

その一方、死んだ夫は落下して死んだゆえ、窓から下を覗くカットは多用される。それは人の視点で。

映画的オチがないままに終わる、なんて書いたが、当然そんなことはなくて、妻が夫を殺したのか、自殺だったのか判明はしないけど、別の落としどころがある。

この作品は、容疑者の子供である主人公が、ある決心をするまでの物語に違いない。妻が夫を殺したのか、つまり、主人公の母親が彼の父を殺したのかどうか、それが裁判で争われるわけであるが、

主人公の子供は、母が殺しをしていないと信じよう、そう決心をするわけである。その証拠などは後付けでもよくて、とにかく決意する。

実は殺していたとしても、殺していない世界線を生きよう(そういうセリフもあり)、

主人公の少年がそうやって頭の中を整理するまでの物語。というふうに、観客である自分もそうやって頭の中を整理していくうちに、良い映画だったなと。それにしても、タイトルが最高で、それだけ観たくなる。